選手の安全確保のため新基準ペラが導入されておよそ半年。悲喜こもごもの結果を生んでいるこの規格も、若干の変更を余儀なくされています。
『先端から0.3ミリのところで0.7ミリ以上の厚みが必要』という規定を巡って解釈の違いが生じました。関係機関で調整の結果、先端を丸くしたり微妙に尖らすような加工は出来ないことに。「面出し」と選手が言う、平らな先端処理が求められています。
|
●ペラ第一の時代
こうした改変を選手はどう受け止めているのでしょうか。佐藤大介選手に聞きました。
「今はペラ第一の時代です。面出しが必須になってからは若干度合いが下がりましたが、それでもペラ次第というのが現状ですね」。
鈴木幸夫選手率いるペラグループ“Sブリット”の若きリーダーは、爽やかで実直。ありのままを話してくれます。
「新基準ペラ導入直後は完全優勝が結構出ましたよね。でも今は少し減りました。これも面出しの影響だと思います。それでもペラ格差が大きいですよ。エンジン勝率に関係なく出る人は出ますから。僕もいいペラを作ろうと必死です!」。
05年5月から10月期の勝率が7点台超と堅調ながら、「調子がいいと言ってもあまり記念を走っていないのが気掛かりなんです。一般戦でもペラ格差が大きいわけですから、記念級のペラの進化度が気になります…」と旺盛な向上心。「今は杢野誓良君と情報を交換しあったりして研究しています。それなりの成果もあるので、グループのメンバーにフィードバックしたいんですが、斡旋の関係でなかなか集まれないのが残念です」と、後輩のことも心配していました。
●仮説を実行し検証する、あくなき探求心
ライバルで気になる存在については、「同期の田中豪」と口を開いた佐藤選手。昨年優勝6回、今年もここまで(10月21日現在)優勝5回と着実に頭角をあらわしている田中選手について、「物事を深く考えるヤツなんですよ。話しを聞くと感心することばかりです。同門の村田修次君も同じタイプですね」と語りました。山口雅司選手や長岡茂一選手がリーダーとして活動するBPクラブの存在感は大きいようです。
「考えずに適当にやっていたらダメなんですよね」と話す口ぶりからは、自分に課題を課す厳しさが感じられました。成功からは次の成果へのヒントが生まれるばかりか、失敗によって発想の幅が広がるのは、しっかりとした考えに基づいて行動しているから。成り行き任せでは好成績は長続きしません。
ところで、これから季節は冬。寒さとともに水面にやってくるのが波風です。苦手な選手は、対戦相手の前にこの自然環境と対決しなくてはなりません。しかし、佐藤選手はいわずと知れた波巧者です。「若いときからずっと得意です。元々怖さを感じたことはなかったんですが、デビューして1〜2年目の桐生で劇的なことがあってからは特に自信を持ちました」といいます。
波のためピットに帰投できない艇が出るほどの猛烈な悪コンディションの中、佐藤選手は本番レースで6等から1等に躍り出るという離れ業を演じたのです。そのレースには波乗りでならす藤井定美選手も出場していました。
「しっかり乗ればこんなに違うんだということを実感した瞬間でした」と振り返りつつ、「波乗りも考えることが大切」と続けました。
「波によって舟が安定しないのはどうしてなのか、そのメカニズムを掴むことが大事だと思うんです。舟の向きやハンドルワークにレバー操作、すべてが連動しているはずです。一旦波に振られると、舟は揺さぶられ続けます。ハンドルをどう切ろうともレバーをいかに握ろうとも言うことをききません。でも、波の頂点から頂点へ飛び移っていくようにターンすれば結構握って旋回できるんですよ…」。企業秘密ともいうべき高等テクニックは驚愕に価します。
その旋回のための事前準備については、「直線をしっかり乗らないと波を制すことはできません。足の張り方にも工夫が必要ですし、ハンドルの切り始めの初動の動きも重要です。ボートのサイドで波にぶつかっていったら自由が利かなくなります。微妙な角度調整をして安定させます。また、波によってどれくらいターン位置がずれるかという判断も必要ですね。」と荒れ水面の走り方の見どころを披瀝。冬のレース観戦の楽しみがまた一つ増えました。
仮説を実行し検証する姿勢は、あくなき探求心の表れ。ナイスガイ・佐藤選手のますますの活躍を祈ります。
|